◆アンティークに癒される漢方相談薬局
店の前に到着した宅急便のドライバーが、電話をしてきました。
「神仙堂薬局はどこに引っ越しましたか?」
あまりの変わりように、店舗が引っ越したと勘違いしたドライバーさん
ドライバーさんの目にしたのは、この違いでした。
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藤枝市岡部町の相談薬局 神仙堂薬局 が今回の現場です。
今回は、築40年を過ぎたコンクリート2階建てのリフォームです。
親子3代続く地元では、誰もが知っている薬局さんです。
お客様からの要望
・築40年のRC造の住居を、店舗に変更する
・元の店舗は解体し、駐車場にする
・玄関の位置を変更して、駐車場の正面に向ける
・元の玄関は、庭からの勝手口にする
・薬局に見えない相談薬局にしたい
・間接照明を入れたい
・ホテルのロビー・ラウンジのような空間にしたい
簡単に要約すれば
漢方相談薬局だけれど、ホテルのような落ち着いたインテリアで
しかも、漢方相談薬局には見えない店舗を作りたい、ということです。
そこで私が考えた方針は、3つでした。
1 漢方は自然素材なので、インテリアにも素材感が伝わるようにしたい。
木のドア・ステンドガラス、鉄製の門扉に階段手すり
2 漢方は伝統、それは時の流れが愛着に変わるアンティークとして表現する。
3 木の茶色に移りこむ、ステンドの光 まるで教会のような空間。
それでは、実際にどのように生まれ変わったのか、ご案内しましょう
1 まずは解体工事
お店全体のレイアウトを考えた時に、問題になったのが玄関の位置でした。
来店するお客さんの動線を考えると、この場所では入り口が分りません。
新しくできる駐車場からの見た目は、この角度です。
動線を考えれば、この掃き出し窓を玄関にするのが、一番です。
掃き出し窓は、リビングにある縁側の窓でした。
リノベーションの方針も決まったので、いよいよ解体工事です。
今回は、住宅を漢方薬局に作り替えるので、内部は全て解体します。
解体が終わったところで、最初に浄化槽を交換することにしました。
もともと駐車場だった場所に、古い浄化槽がありました。
今のように、微生物で分解・浄化するような浄化槽ではありません。
ただ、溜めておく、沈殿槽のようなものでした。
これだと臭気が上がってくるので、交換します。
ところが、ユンボで掘り始めると、なんと地下水が湧き始めました。
次は、防湿コンクリートを打設します。
今回は店舗になるので、1階は土足で使用することになります。
2 内装工事が始まりました。
2-1 まずは、床を作ります。
置床という工法で、マンションで使われている工法です。
2-2 断熱材の工事です
コンクリートの建物だと、断熱工事をどうするのか?
最近のマンションでは、ウレタン断熱材を吹き付けしています。
私のやり方は、違います。とっても単純です。
すべての外壁面には、写真のように間柱を並べます。
そこに、ビニールに袋詰めされた断熱材を充填します。
隣り合う断熱材の、ビニールの耳を重ねて、テープで張り合わせます。
これで、ビニールによる気密処理が完成します。
この方法で断熱工事をする理由があります。
店舗の場合、使い始めて気づく「こうすればよかった・・」があります。
その大半が、コンセント・LANような電気配線に関することです。
外壁面の間柱を設置するので、壁には5cmの懐があります。
この懐のお陰で、電気のリフォームがやりやすくなります。
2-3 アンティーク・ステンドで作り込む
今回、随所にステンドグラスを使っています。
京都のお店「ウェリントン」に行って、買いだしてきました。
これらのステンドは、1930年代の英国のアンティーク品です。
漢方薬のイメージとしては、日本の伝統的な治療法
歴史を感じられて、ホテルのような雰囲気を演出するにはピッタリです。
実際にどのように使われたのか、ご紹介します。
お店の玄関正面です
店内のドアに利用します
からし色のドアの裏側は、なんと真っ白。
まったく違う色で塗り分けています。
表と裏で、まったく違う色にすることができるのが、魅力です。
待合室側は、黄色いガラスタイルに合わせて、からし色。
勝手口側は、勝手口と同じピンクで縁取り、アクセントを付けます。
こちらが、ピンクに仕上げた勝手口
ピンク色にお色直しした瞬間から、通行人が覗き込み始めました。
中には、「間近で見たい」と声を掛ける方もいました。
ピンクのドアの上、欄間はこんなガラスです。
80年~100年近い、アンティークのドアは扱いに苦労します。
一番苦労するのが、ドアの反りと歪みで、修正ができないことです。
この反りと歪みに合わせて、枠を作り、開閉できるように調整します。
そのため、取付を嫌う工事会社も多いので、事前に確認してくださいね。
ステンドのパネルをはめ込みます
こんなステンドグラスのパネル1枚で、部屋の雰囲気は変わります。
130㎝×75㎝で7万円なら、本当にお買い得です。
このサイズを新規に制作してもらえば、20万円以上はします。
アンティークなら7万円です。
ただ、1つだけ注意しておいたほうが良い事があります。
取付工事を快諾してくれる会社が少ないことです。
ましては、新築工事の途中で依頼すれば、なおさら対応しません。
事前に工事会社の了解をもらうことを大切です。
特別に制作したステンドグラス
今回、特別に制作依頼をしたステンドが3枚あります。制作依頼したのは「ステンド工房 ニャーゴさん」
こちらから要望したデザインのポイントは、生薬です。
生薬として使われる、花や草木の中からモチーフを探しました。
やまつむぎ、かりん、トリカブト、ナツメグ、やまゆり
漢方相談に来られた患者さんは、2階の相談室に向かいます。
階段を上ると、この3枚のパネルが目に入ります。
相談室に入ると、ここにパネルが飾られています。
2-4 相談室に本棚をつくる
相談室は、執務室としての書斎も兼ねています。
そこで、乱雑になった執務室を目隠しするようにしました。
目隠し壁の裏は、本棚になっています。
2-5 ガラスブロックを組み立てます。
このガラスブロックは、階段ホールにあります。
階段ホールを明るくし、夜は光がこぼれるようにしました。
2-6 階段を作ります
2-7 電気配線を整理する方法
このお店では、電話相談もあれば、対面相談もあります。
そのためお店スタッフは院長と内線で頻繁に連絡を取り合います。
また、すべての部屋にLANケーブルの差し込み口を作ります。
そこで、1階-2階の中継BOXを作り、配線を整理しました。
2-8 待合ホールと間接照明
要望のあった、ホテルのロビーのような空間
これを実現するために作ったのが、間接照明の演出でした。
3 ビフォー&アフターを整理してみましょう
リビングにあった掃き出し窓は、新しい玄関ポーチになりました。
縁側のブロックを解体したことで、ベランダが玄関ひさしとなりました。
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玄関の前には、アイアンゲートを取り付けました。
お店が閉店すると、ゲートは閉じられカギがかかります。
住宅の頃の玄関は、ピンクのアイアンドアの勝手口となりました。
女性好みのビビットなピンク紫で、出勤が楽しくなるカラーです。
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リビングの掃き出し窓は、玄関に変わり
ステンドグラスを通した光が、受付ホールへと降り注ぎます。
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1階の和室は、調剤室と倉庫に生まれ変わりました。
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お風呂場は、トイレと手洗いコーナーに変わりました。
ミラー、モザイクタイル、ステンドグラス、金色の水栓蛇口、カウンター
狭い空間ですが、すべての素材が入っています。
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階段ホールは、かりん木でヘリンボーン様式で、手間暇かけて作り上げました。
ガラスには、アンティーク調のうろこ模様ガラスをつかいました。
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2階の寝室は、相談室に生まれ変わりました。
押入れの向こう側が、階段ホールです。
階段ホールからの光が、相談室のステンドを照らします。
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こうして出来上がった、お店
さあ、お客様の要望通りとなったのでしょうか?
こちらの動画からご覧になれます。